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私のしごと作文コンクール(3)

現代の日本で「ニート」と呼ばれる若者たちが増えている。社会問題とすらなりつつあるニートは、仕事も通学も職業訓練もしていないものたちを指し、その数は不景気が徐々に回復しつつある経済とは裏腹に、増え続けているらしい。また、フリーターの数は去年より4万人ほど減ったと聞いた。だが、いずれにしろ就職が容易ではないことに変わりはないだろう。

「働くこと」について考えるのに、私がまず思い浮かべたのは、やはり現代の若者の仕事に対する姿勢だ。数年前ならばアルバイトをしながら生計を立てていくフリーターについて書いただろう。フリーターの彼らは数々の職を転々として、自分にあった職業を見出している。フリーターの人たちの多くは、「働く意志」というものを明確に持っているのだと思う。だが、フリーターと同じようなカテゴリに分類されている、ニートについてはどうだろうか。

ニートとは正に「働く気のない集団」なのだろう。仕事も勉強も、アルバイトすらしない。学生の誰もが一度は夢見るだろう『毎日が日曜日』状態の人たち。そんな人たちが確実に増え続けている理由とは一体何なのだろうか。

私が思うに、ニートという存在が生まれた原因は現代社会のもつ独特の、倦怠感と呼べるようなものだと思う。私が将来の進路について考えている時にふと思うことがある。思う、というより魔が差す、という言葉の方が正しいのかもしれないが、それはふと現れてそれが最も簡単な選択だと言わんばかりに耳元で囁くのだ。曰く。『やめてしまえばいい』と。目的語は抽象的過ぎてこれと絞ることは出来ない。だが、その時私はニートという存在の原因を社会に押し付けたくなる。

日本は豊かな国だ。先進国、と呼ばれる国々の中に間違いなく入りこんでいるこの国は、大抵のものがあまっているのだと思う。発展途上国の人たちが毎日必死になって得ようとしているものが、この国では簡単に手に入る。蛇口をひねれば浄化されている安全な水道水が出るし、コンビニに入れば食べ物が買える。一般家庭にしても同じように物があり余っていると思う。もし、日本が六十年前の戦後のように貧しい国であったなら、大人も子供も必死で働くのだろう。それは生きていくために必要なことだからだ。だが、今はどうだろうか。子供が一人くらい働かなくとも家族はその子供を養える。つまり働かなくとも生きていけるのだ。ここで一つ働くことの意味が消えた。子供一人くらい家族で養えるから、働かないことを非難こそすれ、働くことを強制する親は少ないと思う。最終的に本人の意思に任せるしかない 、という無責任な言葉を言って終わる。それは親から子に対する甘えだろう。そしてまた子ども自身の甘えでもあると思う。

また、働くことによって得るものの価値が下がってきていると言うことも原因の一つだと思う。お金があるから幸せではないと気付いてしまった人たちにより、幸せとは何かと考えるようになった。今までは働いて豊かな生活を手に入れることが正しく幸せである、という定義だったのに、その定義がなくなり幸福追求は振り出しに戻った。働いたら幸せになれるわけではない。仕事は楽しいことではない。そんな事は言われなくても大多数の若者は知っている。「嫌な思いまでして、だるい仕事をする意味はどこにある。働かなくても食べていけるのに」そんな思いをどこかに持っているのではないだろうか。

だが、だからといって働かない訳には行かない。労働とは経済活動の一環であり、個人個人が働くことによって、社会を支える基盤が出来ているのだから。それを好き嫌いで放棄するわけにはいかない。

ではどうすればよいのか。私は新しい理由があればいいのではないかと思う。人間はなにをするにも理由を求める生き物だと聞いたことがある。そして今は働く理由がなくなってきている。だから私は、まず言い訳でも詭弁でもいいから、とにかく若者が納得できるような、働くことへの明確な理由付けが必要であると考える。

(参照先:仕事への架け橋
この作文は2005年に専門学校新聞社が主催する「私のしごと(job大賞)作文コンクール」に応募され、佳作に選ばれた作品である。繰り返しになるが、ニートは「働く気のない集団」ではない。「15〜34歳までの非労働力人口のうち、通学をせず、家事に費やす時間も少ない人」という定義に該当していれば、病気や障害、あるいは家族の介護、さらには資格取得や進学のために独学をしている場合であっても、定義に該当する限りニートに分類される。確かに2005年頃のマスコミは、ニートを「働く気のない集団」として報道していたという経緯もあるため、この作文を書いた生徒が事実誤認をしていたとしても、それを批判の対象にすることはおこなわれるべきではない。問題は、事実の検証もおこなわず、こうした社会問題を教育に取り入れた文部科学省の姿勢である。ニートの定義や統計方法を確認すれば、こうした認識が誤りであることは容易に確認できたはずである。にもかかわらず、そのプロセスを踏まずにマスコミの報道を鵜呑みにした同省の責任は極めて重い。今後もキャリア教育を継続していくのであれば、同省はこれまでの誤りを認め、生徒に対する説明責任を果たすべきだろう。無論、そのことによって学校教育に対する不信感が増したとしても、それは自業自得というものである。
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私のしごと作文コンクール(2)

私は、去年の夏休みにホテルでウエートレスのアルバイトをしました。初めはとても緊張して、不安もありましたが、周りのスタッフが優しく、仕事も丁寧に教えてくれたので、楽しく働くことが出来ました。しかし、早朝出勤が多く、そのうちに面倒くさくなって、早く辞めたいと思うようになりました。

そんな時、あるお客さんから「おいしかったよ。ありがとう。お姉ちゃんアルバイト?また来るから頑張ってね」と、思いがけない言葉をかけられ、私は自分が恥ずかしくなりました。優しく指導してくれたスタッフにも申し訳なく思い「自分は何をしていたのか」と深く考えさせられました。

何気ないお客さんの言葉が、私をかえてくれるきっかけとなり、その後、私は先輩スタッフの応対を真似ながら、仕事に励むようになりました。

初めての給料をもらった時は、働いてお金をもらうことの大変さを実感し、何よりも自分の力で働いたという達成感を味わいました。

最近、「ニート」という言葉をよく耳にします。自分が働いた体験から他人事とは思えず、詳しく知りたいと思うようになりました。

私は、今までニートの人達に対して、親や社会に甘えて働くことを放棄しているのではないか、と偏見を持っていました。しかし、実際には人間関係を上手く築けなくて、働くことに自信を持てずに悩んでいる人達がニート人口を増やし、そのような人々の中に何年も引きこもってしまうケースがあることを知りました。

私の場合、周りのスタッフが丁寧に指導してくれたおかげで、働くことに自信が持てるようになりました。もちろん失敗して落ち込んだりしましたが、ほかのことでカバーしようと気持ちを切り替えたのです。この前向きに働くという経験は、私の学校生活の中でも活かされ、今までなら自分で無理だと判断し拒否していたことを、今は「やってみなくては分からない」と前向きな気持ちで取り組むようになりました。

しかし一方で、ニート人口を増やしているその原因は、今の日本社会の仕組みそのものにあるのではないかと思います。日本は昔から「標準」にこだわり、その範囲からはみ出す人の考え方や行動を排除する傾向があります。だから引きこもりの人は普通ではない、つまり、変人扱いをして社会に受け入れないこと自体が問題だと思います。

その上、働く事に対して前向きになれない人々に「国民としての労働」とか「納税の義務」などという、押しつけがましい言い方をします。これは、逆に追い詰める結果になっているのだと思います。

ニート人口を減らすために、まず、引きこもっている人々に、国は「労働は才能を開花させるチャンスである」ということに気付かせ、それが「生きる楽しさ」につながるという点をアピールしていくべきだと思います。さらに、実際に働く場所を確保するべきだと考えます。

もし、ニートの人々がそれぞれの才能を職場で発揮できた場合、あらゆる意味で行き詰まっている日本の経済に別の方向から新しい風が吹き、発展するチャンスになるのだと私は思います。

私たち一人ひとりが歓迎する姿勢で、ニートと呼ばれる人々を社会が受け入れたとき、今までにない新しい日本社会が生まれると私は期待しています。

(参照先:仕事への架け橋
この作文は2006年の「私のしごと(job大賞)作文コンクール」において文部科学大臣賞(最優秀賞)に選ばれた作品である。全体として善意に溢れた内容ではあるものの、ニートに対する認識は根本的に誤っている…というのも、ニートとは特定の調査期間に、「就業や、就業に向けた活動をしておらず、かつ家事や通学が生活の中心ではなかった15歳から34歳までの人」という条件に該当していれば、背景にどのような事情があるかということは一切考慮されないからだ。つまり病気療養中であっても、進学や資格取得のために独学をしていても、家族の介護や育児をしていても、ボランティア活動をしていても、前述の条件に該当していれば「ニート」なのである。決してニートという人種が突如として出現したのではなく、従来から存在していた様々な状況にある人をニートという言葉で括ったにすぎない。したがって「人付き合いが苦手」とか、「ひきこもり」というイメージもまた「偏見」なのである。実際のところで言えば、ニートの増加には、就職氷河期に雇用が減少したことや、それに伴って労働環境が悪化したことなどが強く影響している。いくら仕事を探しても見つからなければ、自ずとハローワークに通う頻度も少なくなり、自宅で資格の勉強をしたり、自己啓発に時間を割くようになるのは自然なことであるし、労働環境が悪化すれば、身体の不調を訴える人が増えるのも無理のないことだからだ。それを教育によって解決しようとしたところで、いったい何ができるというのか?文科省はよく頭を冷やして、方針を改めるべきだろう。
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私のしごと作文コンクール(1)

今、日本では「フリーター」という新しい言葉が誕生している。この言葉を辞書で引いてみると「定職につかないで、アルバイトをやりながら気ままに生活しようとする人(小学館発行大辞泉)」とある。いわゆる「フリーアルバイター」の略語である。

また、この言葉は新しく誕生するだけでなく、多くの人が使い、一種の職業となりつつある。しかし、フリーターは本当に職業となってよいのか。そう考えると一言で「はい」と答えることはできないだろう。

職業とは、生計を維持するために、人が日常従事する仕事のことである。その職業にフリーターが入るのか。

まず「生計を維持する」という点に着目して考えてみる。時給七百円前後となった今、毎日八時間のアルバイトをして日給五千六百円。月額では十六万円をゆうに超えることとなる。一月十六万円で生活ができるか。一人暮らしであれば可能となるだろう。しかし、妻子を持ち一家を支える立場になった時、一月十六万円では生活は不可能となる。従って、「生計を維持する」という点は立場により可能にもなるが不可能にもなるということが分かる。

次に「人が日常従事する仕事」という点に着目して考えてみる。従事とはもっぱらその仕事に携わることである。アルバイトで仕事に従事することができるか。いつ職を失うか分からない、昇給もできない、アルバイトというだけで差別される−そういった環境の中で日常仕事に従事することは不可能であると思われる。

これらのことを総合的に考えるとフリーターは一種の職業と言い難いことが分かる。しかし、今となっては、フリーターを目指す若者が増えているということも耳に入る。フリーターを目指す若者たちは何を追い求めているのか。ただ、今の大人たちに洗脳されているだけではないのか。フリーターに対する不思議な憧れを今の若者たちは持っているのだろう。

しかし、僕はこの考えに微塵も賛同しない。働くということは、自分が輝き、自分を磨いていく場だと僕は思っている。

昨年授業の一環で職場体験学習を行った。そこで得たものは、その職を愛し、楽しむことの重要さである。常に職場をきれいにし、お客様を笑顔で受け入れることができるのはその職を愛し、楽しんでいるからではないかと思う。また、ひとつの仕事を一人だけで行うのではなく何人かで連携することによって能率が高まってくるのだと思う。

例えば火事場で人を助けるとする。通報を受け、指令を出す人。その指令を受け、火事場で指示を出す人。その指示に従い、火事場へ突入する人。その助け出された人を病院へ搬送する人。その搬送された人を治療する人。こうしてひとつの命を助けることができるのである。こうしてひとつの仕事を仲間とともに達成した時の達成感は大きいもので、感動を伴うものだと思う。そういったとき連携の嬉しさ、仕事の喜びを感じるのだと思う。この感動と喜びを一つ一つ積み重ねていくとき、自分が輝き始め、自分を磨いていけるのだと思う。

人には必ず夢がある。その夢が小さかろうと、大きかろうと、自分にとっては将来、実現させたい事なのだ。その夢が実現される要素の多くは仕事の中に隠れているのだと思う。自分にあった仕事を見つけ、定職につき、自分の夢を実現させようとひた走る。そうした時に、自分の夢への扉が現れるのではないかと思う。こういう風に仕事には、自分の夢を実現することができる要素が多く含まれているのである。

僕にも当然、夢がある。その夢について考えたとき、その夢に近い職業に就職したいと思う。当然、フリーターでは夢は実現されない。定職につき、一歩一歩その夢へと近づいていきたいと思っている。

フリーターというものは、いいようでとても悪いものである。フリーターでは全てにおいて自分が輝けないし、自分を磨くこともできないだろう。

働いているということは、定職についていることだと思う。また、働くということの定義は大きく分けて三つあると僕は思う。一つ目は自分が輝くということ。二つ目は自分を磨くこと。三つ目は自分の夢を追い求めるということ。この三つが揃ったとき、働くということになるのではないのか。

(参照先:仕事への架け橋
この作文は2005年に専門学校新聞社が主催する「私のしごと(job大賞)作文コンクール」に応募され、佳作に選ばれた作品である。このように、いま教育現場ではキャリア教育の名を借りた職業差別教育が活発におこなわれている。政治の不作為を自己責任論に帰結させ、責任を逃れようとするその手法は、かつてナチスドイツがユダヤ人を迫害するためにおこなったプロパガンダに通じるものがある。純真無垢な高校生を教育によって洗脳し、日々、汗を流して働くフリーターを雇用形態の違いによって差別する…卑劣としか言いようがない暴挙である。
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「働き方」を教えてくれる授業

5月26日のNHK「週刊こどもニュース」のコーナーで、「働き方を教える授業」が紹介されていた。(以下引用)

週刊こどもニュース
鳥居
フリーターを知ってる人?(児童全員の手が挙がる)
ピント
まずはフリーターと正社員の給料について話をしたよ。
鳥居
仮に一生フリターをやります。その時、一生正社員をやった人との一生のお金(生涯賃金)、どれくらい差がつくか?1つマルをつけてください。
ピント
フリーターと正社員の一生でもらえる給料の差は?「200万円?」「2000万円?」「2億円?」…正解は2億円。
児童(全員)
「え〜」
鳥居
2億差がつきます、どう思いますか?
児童A
「そんなに差がつくとは思わなかった」
児童B
「あまりにもすごい」
ピント
中にはとってもお金を稼ぐフリーターもいるけど、多くのフリーターはボーナスが無く、正社員より給料も少ないんだって。
ピント
では次の質問、フリーターが風邪をひいたら治療費は?…先生は「1万円くらいかかってしまうこともある」と説明したよ。
鳥居
あのね、1万円くらいかかっちゃうんだね。注射を打ったり、いろんな薬をもらったりすると、1万円くらいいっちゃうことがあるので、ちょっと分かりやすく僕は1万円としたんだけど。
ピント
正社員は病気になった時に備えて、自分と会社がお金を出し合って健康保険に入ってる。そうすると治療費は3割を払うだけで済む、いっぽうフリーターは給料が安いなどの理由から保険料が払えず、健康保険に入っていない人もいる。そうすると治療費は100パーセント、だから1万円かかることもあるんだ。
児童C
びっくりしました。風邪ひいて病院行ってお金を払う時、1万円もかかるとかそういうところです。
児童D
もうちょっと勉強頑張らないと、2億円も違うから…
鳥居
私はやっぱりね、小学生からやることにね、意味があるかなと、全国どこでも2億円の差っていうのはみんな驚くんですよ。今日もそうでしたが、ああいうことを伝えて、知ってなるならしょうがないですけど、知らないでなっちゃう人を私は防ぎたいということでやってます。
週刊こどもニュース
ひらく
なんかすごいね2億円って、前は正社員とフリーターっていうと給料が違うってだけだと思ってたけど、今日見てみて給料以外にも病院行くのもお金がかかったり、いろんな生活の面でいろいろかかってくるんだなってびっくりした。
お父さん
確かにね、お金だけのことを考えれば、正社員のほうが良いのかもしれなけどもね、正社員だと朝から夜遅くまでずっと会社の中で働いて、家族と過ごす時間もほとんどないとか、あるいは自分で自由な時間もないとか、そういうこともあるわけだね。いっぽうね、フリーターのほうは自分のために自由にできる時間がたくさんある、そういう時間を持てる、だからいろんなこともやれる…といういこともあるわけです。だから一概にね、「フリーターはダメだ」というふうに思うのもどうなのかな…という気もするんですよね。それとね、実はフリーターについてはこんな問題もあるんですね、会社が雇ってなかったので本当は正社員になりたかったんだけれどもフリーターになってしまっていると…だからそういうフリーターの人、意欲があって能力があれば正社員にするような、そういう仕組みというのがまだまだ日本ではね、足りないんじゃないか、そういう仕組みを考えるべきじゃないか、そういう意見もあるんですよね。いずれにしても自分がどういう生き方をしたいのかというのをちゃんと考えて、それにあった仕事を見つけるということが大切ですよね。そのためにも「どんな仕事があるのか?」とか、「働き方っていうのはどういうことがあるのか?」とかっていうのを、まず知ることが必要だということですよね。
お母さん
さあ、みんな今日は仕事について考えてみたんだけど、どういうふうに思うかな?
みお
なんか、私は「この職業になりたい!」とかは思うんだけど、具体的に「働き方は?」とか、そういうことはぜんぜん考えていなかったから、考えなきゃいけないんだなって思って、真剣に考えなきゃなって思った。
ひらく
僕は、前までは正社員が良いって思ってたの、給料も高いし、なんだけど、今日見てみてフリーターもぜんぜん悪くないし、夢に向かっているというのも良いなと思った。
お父さん
そういう気持ちもあるってことか。
お母さん
選択が広がったってことですね。…さぁ、小学生そして中学生のみんなはね、まだまだ時間があるので大丈夫です。ゆっくり考えてみてくださいね。

これは「ニート・フリーターになる前に受けたい授業」で何度かテレビにも取材されている鳥居徹也による授業である。彼のような一般人を学校に招いて授業をおこなうスタイルは、2000年に「総合的な学習の時間」が導入されて以降、頻繁に実施されており、特に職業に関する授業(キャリア教育)は、フリーターやニートの増加を受けて、2004年頃から、文科省の肝入でおこなわれている。通常、このような授業では「講師はボランティア」である場合が多いが、彼は文科省の委託事業として、公費を支給されておこなっており、その点からも、文科省の肝入ぶりが伺える。

さて、彼の言う「フリーターと正社員の生涯賃金の差が2億円になる」という言説だが、はたしてこれは本当だろうか?少子化社会白書の資料を引用して検証してみることにする。ただその前に、生涯賃金は「一生でもらえるお金」ではなく、当然そこから所得税などが引かれるため、まずは所得税の税率を確認しておく。

所得税率(平成19年)
所得額 税率 控除
195万円以下 5% 0万円
195万円超330万円以下 10% 9.75万円
330万円超695万円以下 20% 42.75万円
695万円超900万円以下 23% 63.60万円
900万円超1800万円以下 33% 153.60万円
1800万円超 40% 279.60万円
※基礎控除は38万円
給与所得控除(平成19年)
給与等の収入額 控除 加算額
180万円以下 40% 0万円
180万円超360万円以下 30% 18万円
360万円超660万円以下 20% 54万円
660万円超1000万円以下 10% 120万円
1000万円超 5% 170万円
※控除額が65万円に満たない場合は65万円

控除には扶養控除や社会保険料控除などがあるが、ここでは給与所得控除のみを扱うことにする。また、この税率は平成19年時点のものであり、今後は変更される可能性があるものの、便宜上、変更されないことを前提として計算する。

一般労働者の賃金(単位:千円)
年齢 男性 女性
税引前 税引後 税引前 税引後
18〜19 2429 2372 2084 2039
20〜24 3144 3062 2795 2725
25〜29 4002 3872 3374 3284
30〜34 4890 4688 3717 3609
35〜39 5769 5458 3950 3824
40〜44 6373 5965 3922 3798
45〜49 6710 6246 3773 3661
50〜54 6655 6201 3678 3573
55〜59 6344 5940 3564 3468
生涯賃金 231580 219017 154285 149906
パートタイム労働者の賃金(単位:千円)
年齢 男性 女性
税引前 税引後 税引前 税引後
18〜19 714 714 678 678
20〜24 986 986 1028 1028
25〜29 1432 1412 1297 1284
30〜34 1518 1494 1223 1213
35〜39 1593 1565 1194 1186
40〜44 1581 1553 1193 1185
45〜49 1659 1628 1210 1201
50〜54 1783 1749 1234 1224
55〜59 1800 1765 1280 1268
生涯賃金 63188 55829 49651 42700
(資料出所:少子化社会白書2003年

上記のとおり、男性は約1億6千万円(税引後)、女性は約1億1千万円となり、平均では1億3千万円〜1億4千万円程度の差がつくという結果になった。このことから2億円というのは、やや誇張された金額であることが確認できる。

中卒の生涯賃金(単位:百万円)
企業規模 男性 女性
標準 一般 標準 一般
1000人以上 279.8 240.2 - 135.1
100〜999人 209.0 187.9 - 118.8
10〜99人 183.4 166.6 - 105.0
高卒の生涯賃金(単位:百万円)
企業規模 男性 女性
標準 一般 標準 一般
1000人以上 285.1 258.1 212.6 160.7
100〜999人 237.7 201.2 186.7 134.4
10〜99人 209.9 173.5 154.6 117.9
高専・短大卒の生涯賃金(単位:百万円)
企業規模 男性 女性
標準 一般 標準 一般
1000人以上 294.9 261.7 229.8 196.6
100〜999人 240.5 215.1 222.2 170.5
10〜99人 226.6 188.6 188.4 145.1
大学・大学院卒の生涯賃金(単位:百万円)
企業規模 男性 女性
標準 一般 標準 一般
1000人以上 323.9 317.6 275.9 246.9
100〜999人 258.4 258.8 258.8 231.6
10〜99人 231.5 214.9 214.5 179.6
(資料出所:ユースフル労働統計2003年

また「正社員」と言っても、従業員数100人未満の企業では、差は更に縮小する。このように、たとえ正社員であっても、企業規模や、学歴、性別などで、賃金は異なり、2億円という金額は著しく正確さを欠いている。

なお、フリーターの健康保険料の納付率については客観的な資料を得ることができず、「フリーターが健康保険料を払っていない」とする言説の真偽を確認することはできなかった。ただ健康保険は、国民健康保険であれば「加入は義務」であり、健康保険に入っていないということは通常はありえない。また滞納した場合であっても、その後に保険料を納めれば医療費は支給されることになっている(そもそも経済的な事情で保険料が納められないということは、生活保護の受給資格者である可能性がある)。またフリーターであっても、同一事業所で週30時間以上の労働をおこなっていれば、社会保険(健康保険)へ加入させることが雇用主側に義務づけられており、もしそれがおこなわれていないということであれば、責任は雇用主側にある。

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就職氷河期とは何か?(後編)

就職氷河期に大量の就職難民が生み出された背景に、「雇用のミスマッチ」を指摘する意見もある。これは応募者が求人の定数を下回る場合か、もしくは求人の採用条件を満たす応募者がいない場合のことを言い、労働条件の格差や産業構造の変化が、その主な原因と考えられている。

業種別大卒求人倍率の推移
(製造業)
卒年 就職希望者数 求人総数 求人倍率
1996 128,800 176,000 1.37
1997 136,900 233,800 1.71
1998 141,700 290,600 2.05
1999 145,700 222,800 1.53
2000 140,000 169,200 1.21
2001 153,000 207,000 1.35
2002 152,400 258,000 1.69
2003 144,400 233,700 1.62
2004 155,800 248,400 1.59
2005 162,400 265,300 1.63
2006 160,600 310,100 1.93
製造業…食品、繊維、衣類、木材、家具、製紙、印刷、化学、石油、プラスチック、ゴム、鉄鋼、電機、電子部品など
業種別大卒求人倍率の推移
(流通業)
卒年 就職希望者数 求人総数 求人倍率
1996 51,100 136,700 2.67
1997 48,600 196,400 4.04
1998 58,400 253,500 4.34
1999 54,400 190,300 3.50
2000 50,200 160,300 3.19
2001 49,300 171,800 3.48
2002 47,200 211,700 4.49
2003 50,600 222,000 4.39
2004 50,900 238,700 4.69
2005 52,800 237,100 4.49
2006 53,500 282,900 5.29
流通業…卸売、運送、倉庫、小売など
業種別大卒求人倍率の推移
(金融業)
卒年 就職希望者数 求人総数 求人倍率
1996 51,200 17,900 0.35
1997 44,000 23,700 0.54
1998 29,500 25,700 0.87
1999 26,700 13,900 0.52
2000 24,700 13,500 0.54
2001 14,300 32,600 0.44
2002 33,400 16,500 0.49
2003 36,300 14,400 0.40
2004 33,300 11,600 0.35
2005 34,600 12,000 0.35
2006 38,400 13,500 0.35
金融業…銀行、証券、保険など
業種別大卒求人倍率の推移
(サービス・情報業)
卒年 就職希望者数 求人総数 求人倍率
1996 131,100 60,100 0.46
1997 144,300 87,600 0.61
1998 173,400 105,400 0.61
1999 176,700 75,300 0.43
2000 197,400 64,800 0.33
2001 187,100 68,500 0.37
2002 197,300 87,200 0.44
2003 199,500 90,000 0.45
2004 193,700 85,000 0.44
2005 185,300 82,500 0.45
2006 183,800 92,300 0.50
サービス業…宿泊設備貸与業、広告、修理、興行、医療保健、宗教、教育、法務関係など(情報業は詳細不明)

上の表は業種別の大卒求人倍率の推移であるが、金融業や、サービス・情報業の求人倍率が高いのに比べ、流通業の求人倍率は極端に低い。これは就職希望者が、転勤や時間外労働が多く、初任給の低い業態を避けている結果だと言え、雇用のミスマッチの要因となっている。

また就職氷河期には、企業が人材の育成を放棄し、即戦力を求めるようになったことや、IT化による労働内容の変化に対応できない就職希望者が多かったことなども、雇用のミスマッチを生み出す要因となった。

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教員採用数の推移
就職氷河期における教員採用数(公立)の推移を調べてみた。それによるとやはり就職氷河期の採用数は現在よりも少なかったことが分かる。しかしこれは景気の影響というよりも、むしろ「団塊世代の大量退職の影響」と考えるべきだろう。なぜなら公立学校の教員は「公務員」でもあるため、基本的に景気の影響を受けないからだ。ではなぜ団塊世代はそれほど大量に採用されていたのか?という疑問も湧くが、それは団塊ジュニアの誕生によって学童人口が増加したことや、高校への希望者全入政策による「特需」の影響と考えれば説明はつくだろう。ところが団塊ジュニアが成長し、教員採用試験を受ける年代になってくると、少子化による公立学校の統廃合で教員採用数は激減する。また年齢制限も引き上げられたことから、競争率は倍増し、氷河期世代はここでも熾烈な競争を強いられることになったのである。
公立学校教員の受験者及び採用者の推移
受験者採用者競争率
1996145,68117,2778.4
1997146,93216,6138.8
1998147,542 14,17810.4
1999145,06711,78712.3
2000147,09811,02113.3
2001147,42512,60611.7
2002150,97716,6889.0
2003155,62418,8018.3
2004160,35720,3147.9
2005164,39321,6067.6
(資料出所:文部科学省
前述のような経緯から、現在の教員の年齢層は「氷河期世代が極端に少ない構成比」になっている。それの何が問題かというと、例えば「キャリア教育」などの際に、就職氷河期の実情を知らない重年の(または若い)教員が担当することで、子供たちに誤った情報を伝える恐れがあるということだ。それは将来的に、氷河期世代の苦難が「他のどの世代からも理解されなくなる」ということを意味しており、実はそれこそが、氷河期世代が最も危惧しなければならない状況なのである。
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フリーターは「悪」なのか?
現在多くの学校では文科省の大号令のもと「キャリア教育」が実施されている。その主な目的は「フリーターの増加を食い止めること」だが、しかしこうした授業の多くは、就職氷河期という過去の出来事については言及せず、単にフリーター個人の資質を問題にしていることが多い、したがって中には「フリーターは努力をしていない」とか「フリーターのする仕事には価値がない」などといった差別意識を刷り込むだけの授業も存在する。そうすることで子供にフリーターという働き方(生き方)を選択させないようにするためだ。しかし現在フリーターである人の多くは自ら望んでそうなったわけではない、正社員の採用枠が極端に絞られたためにフリーターに「ならざるを得なかった」のだ。また、こうした教育を受けた子供たちの中にも、社会に送り出された時に景気が悪ければ、やはりフリーターに「ならざるを得ない人」が出てくるだろう。そういう市場経済の原理を無視し、犠牲となった個人に責任を押し付けることが果たして「教育」なのか?雇用が無いのであればワークシェアをする、賃金が低いのであれば最低賃金を見直す…そうやって自ら問題を発見し解決しようとする態度を養うことが今の教育(生きる力)ではないのか?それをキャリア教育などという言葉で煙に巻くのはやめてもらいたい。(参照先:河北新報社
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社会に出てから役立った科目
出版大手のオリコンは「社会に出てから役立った科目」というテーマで、モニターリサーチ会員の男女(各150人、合計900人)を対象にインターネット調査を実施し、その結果を5日、公開した。それによると、20代で最も役に立った科目は「パソコン(情報処理)」で、34.3%だったのに対し、30代は「国語」が29.0%で最上位となった。…この調査の結果で特筆すべきは、20代で1位となった「パソコン」である。実は30代は、高校の職業科か、大学(または情報系の専門学校)に進学した人しかパソコンの授業を受けていない。それに対し20代は、小中高のいずれかの段階でパソコンの授業を受けており、そのため20代と30代では結果に倍近くの差が出ているのである。…確かに、パソコンは就職には欠かせない必須のスキルだ。「社会に出てから役に立った」というのも当然と言えば当然だろう。しかし氷河期世代の多くは学校教育でそれを学んでおらず、「働きながら」あるいは「ダブルスクール」で専門学校等に通い、自助努力を強いられている。後に続く世代は、そのことをどれくらい知っているだろう?(資料出所:オリコン
社会に出てから役に立った科目
順位20代30代
情報34.3%国語29.0%
英語26.3%数学26.7%
国語26.3%英語24.0%
数学25.0%情報19.3%
地理14.3%簿記13.3%
政経13.3%地理12.7%
歴史10.0%歴史12.0%
物理7.7%政経9.7%
簿記7.7%会計6.3%
10化学5.7%法律6.0%
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キャリア教育が職業差別を助長する
「フリーターって知ってますか?現在、大学を出ても多くの人がフリーターとなっているのは、自分が果たせる役割について小学校、中学校、高校で学習してこなかったことにも原因があると言われています」…これは小学校で実施される「レディネステスト」と言われる適正診断テストの事前説明で、いたいけな児童に対し教師の口から発せられる言葉である。まるで「フリーターは落ちこぼれ」と言っているようなものだ。しかも「学習してこなかった」のではなく「学習する機会を与えてこなかった」のだが…文科省はあくまで自戒するつもりは無いとみえる。…それにしても、このような教育を受けて育った子供たちは、いったいどういう大人になっていくのだろう?やはり職業や雇用形態で人を差別するようになるのだろうか?心配だ…
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キャリア教育と職業差別
「キャリア教育」という言葉をご存知でしょうか?直訳すると職業教育(?)ということになりますが、3〜4年くらい前から文部科学省が推進しているもので、ようするに子供の頃から職業に親しみ、勤労観を養おうという趣旨の教育なのだそうです。「それがどうしたの?」と思われるかもしれませんが、実はこれ、建前上はもっともらしいことを言っていますが、実際は「職業差別」と言ってもいいくらいトンデモナイ内容です。例えば「フリーターになる人は努力が足りない」とか、「フリーターは社会保険に入れない」とか、「フリーターは社会に貢献してない」とか…信じられないかもしれませんが、すべて「学校教育の中で」教えられている内容です。氷河期世代の皆さんの中には、心ならずもフリーターになられた方も多いと思いますが、どう思われますか?
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